Spiga

Spoon / Transference


ゼロ年代、アメリカのインディーシーンで最も勢力的に活動し、数々の傑作を生み出したバンドの一つ「スプーン」の通算7作目となるアルバム。10年代ムーブメントの先駆けとなる今作は、7作目にして尚、実験を続ける彼らならではのユーモアとポップさのアイディアの詰まった引き出しを最大限に活かした作品である。


今回のサウンドでの変化が顕著である部分は、空間系のリバーブ・ディレイを多用した音のエフェクトである。これによって醸し出される雰囲気はThe Clashの『ロンドン・コーリング』や、ましてや昨年亡くなったキング・オブ・ポップを始めとするR&Bを感じさせる。さらにヴォーカルのブレット・ダニエルから発せられるあの声、その独特な倦怠感を包むようなエフェクトにより、よりヴォーカルに”リアル”を感じることが出来る。音楽オタクでも知られるブレットの中の黒人ミュージックに対する解釈とでも呼ぶべきか。

キャッチーさとポップさに追求した前作に比べると、よりダークで渋く、少々難解な所もあるかもしれない。しかし10年代に入り早々、アメリカインディーのドンが投げかけた、この『Transference(感情転移)』というアルバムは、明らかに我々の心の中の「感情」に問いかけているのである。


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